中小企業・個人事業の方にも知的財産について解りやすく説明します。京都弁理士 矢野特許事務所

Q&A

Q1.アイデアだけでも特許(又は実用新案)出願を依頼できますか?

できます。
ただし、出願する場合には発明内容を説明する明細書を願書に添付する必要があります。そして、設計図、回路図、ブロック図、フローチャートなどを用意して頂き、これらの書類をもとに審査官が発明を理解できるように明細書を作成します。
また、アイデアだけで出願し、商品化しようと試作したところ、予想していた効果が出ないこともあります。従って、試作品があれば更に望ましいですし、試作品があれば図面等をご用意頂かなくてもかまいません。

Q2.特許出願と出願審査請求の関係を教えて下さい。

例えばディズニーランドで人気のある乗り物に並んで乗るときの整理券と入場券のような関係です。発明の新規性は出願日を基準に審査されますが、特許出願する(整理券をもらう)ことによって出願日(順位)を確保することができます。そして、審査請求する(入場券を買う)ことによって審査してもらう(入場する)ことができます。早く審査請求すれば早く審査してもらう(早く入場する)ことができますし、遅く審査請求すれば遅く審査してもらう(遅く入場する)ことになります。
いずれにしても先に出願した発明の権利化が後で出願した発明によって阻止されることはありません。

特許出願と出願審査請求の関係

Q3.特許出願後どれくらいの期間で特許権を取得することができますか?

特許庁が審査官を増員して次第に早くなる傾向にありますが、現状では上記Q2における審査請求の日から約8ヶ月~1年かかります。

Q4.もっと早く審査してもらうことはできないのですか?

早期審査事情説明書を提出することによって、約1~3ヶ月程度で審査してもらうことが可能です。尚、特許出願の場合、出願人が中小企業又は個人であるというだけで早期審査事情説明書を提出することができます。

Q5.特許と実用新案の違いを教えて下さい。

材料や組成物のように形の無い物、又は方法に関する技術は実用新案では保護されず、特許出願に限られます。物品の形状や構造に関する技術であれば特許でも実用新案でも出願可能ですが、特許の場合は出願発明が審査されて新規技術のみ登録されるのに対して、実用新案の場合は方式チェックのみで登録されます。
また、特許の場合は権利期間が出願から20年であるのに対して、実用新案の場合は10年です。
尚、費用は、同一内容であれば出願から権利化までのトータルで特許の方が実用新案よりも高くなります。
一方、実用新案の場合は侵害者に対して警告等を発するときは、特許庁による考案の技術評価書を提示する必要があります。技術評価書を提示することなく警告した後、権利無効になれば、相手方に損害を賠償しなければならないというリスクがあります。特許の場合は、そのような規定は設けられていません。
下記に主な相違点を列挙しました。
詳しくはメニューの「各種手続」の「特許」及び「実用新案」をクリックしてご覧下さい。

特許 実用新案
保護対象 技術全般 物品の形状、構造等
審査 実体・方式両方の審査有り 方式審査のみ有り
権利期間 20年 10年
警告等の際のリスク

Q6.商標登録して頂くことによって、その商品の製造・販売を独占することはできますか?

できません。独占できるのは「指定した商品についてのその商標の使用」です。従って、同じ内容の商品であっても異なる商標を他人が使用するのを止めることはできません。
しかし、継続してその商品に登録商標を使用することにより、品質保証機能及び出所表示機能が発揮されて登録商標に信用が化体し、いわゆるブランドとなり、顧客吸引力が付きます。そして、他人が無断で自己の登録商標を使用していれば、差し止め請求や損害賠償請求をすることができます。

Q7.新製品を販売したところ、好評でした。今から特許出願できますか?

平成23年の特許法改正によって、特許を受ける権利を有する者(発明者や発明の譲受人等)の行為に起因して新規性を喪失した場合であっても、販売の日から6ヶ月以内に特許出願すれば、例外的に新規性を喪失しなかったものとみなされるようになりました。従って、6ヶ月以内であれば今からでも間に合います。ただし、出願と同時に例外の適用を受ける旨を記載した書面を提出するとともに、出願日から30日以内に販売によって発明が公知となった事実を証明する書面を提出する必要があります。また、出願日が遡るわけではないので、他人に先を越されて出願されたら終わりです。できるだけ早く出願することをお勧めします。

Q8.特許権を取得するための費用軽減措置はありますか?

あります。正確に言うと、出願時には無いのですが、出願後3年以内に審査請求するとき及び特許査定後に特許料を納付するときに一定条件を満たせば、印紙代が軽減免除されます。特に審査請求時の印紙代は少なくとも122,000円かかりますので、相当な軽減になると思います。
詳しくは、「お役立ち情報」のページの[軽減免除]のところをご覧下さい。

Q9.特許が取れれば、安心して製品を市場に出すことができますよね。

いいえ、安心はできません。その製品が他人の特許技術を利用している場合があるからです。例えば、他人の所有している土地(基本特許)に自分の家(改良特許)を建てたとしましょう。そんなとき土地所有者と契約が成立し土地使用料(特許実施料)を支払っているなどしていれば良いのですが、そうでなければ立ち退き(特許権侵害差し止め)を要求されます。
しかし、特許出願前の調査段階あるいは特許出願が審査される過程で、上記のような他人の基本特許の存在が判明していることが多いので、特許を取得することによりクロスライセンスなどの対策を講じることができます。

Q10.自分で出願手続をすることはできますか?

法律上は可能です。ただし、特許法を十分に修得しないと、せっかくの発明が権利化されなかったり、権利化されても権利範囲がいちじるしく狭くなったりするリスクがあります。

Q11.物の形状・構造に関して特許か実用新案を取得したいのですが、どちらにすべきですか?

実用新案(考案)は特許ほどには高度でない技術を保護することを目的としています。
しかし、「高度でない技術を保護」はあくまで法目的であって、具体的に技術レベルで線引きされているわけではありません。また、新規性や進歩性といった登録要件の審査基準は、特許出願の基準が準用されています。つまり、特許出願して拒絶査定になるような技術は、実用新案であっても真に有効な権利にはならないと言っても過言ではありません。
しかも実用新案の場合は方式チェックのみで登録されることから、侵害者等に対して権利を行使し、又は警告をした後に、その実用新案登録が無効にされたときは、相手方に損害を賠償しなければならないなど、権利には特許よりも制限が課せられており、せっかく実用新案登録されていてもリスクがあります。
このため、特許にするか実用新案にするかは、技術レベルに基づいて決めるのではなく、製品のライフサイクル(製品寿命)、予算、権利侵害に対する措置などの観点から決めることをお勧めします。

Q12.他社の特許出願の権利化を阻止するには、どのようにしたら良いですか?

他社の特許出願の権利化を阻止する手段として、情報提供制度があります。
一般文献、特許公報などの刊行物や自社の特許・実用新案登録出願の明細書等あるいは実験報告書を提出することにより、他社の出願に係る発明が新規性を有していないとか、他社の明細書に不備があるとかの情報を提供するのです。
情報提供は、どなたでもすることができます。匿名でも可能です。従って、他社から警告を受ける前に他社に知られることなく先手を打つことができるのです。
また、情報提供者の希望により、審査官が、情報提供後の次の起案時に、審査に利用されたか否かのフィードバックを、受けることができます。
情報提供は、他社の特許が成立した後でもすることができます。この場合は、その特許に対して特許無効審判が請求されたときに、提供された情報を必要により審判官が職権で採用することになります。
ただし、提出可能な資料は、書面に限られます。例えばビデオテープを提出することはできません。

Q13.未成年者でも特許を取得することができますか?

未成年者でも特許を取得することは、できます。ただし、手続き自体は、未成年者が婚姻をしたときなど独立して法律行為をすることができるときを除いて、法定代理人(親権者など)によらなければすることはできません(特許法第7条)。

Q14.社員全員で完成した発明なので、会社を発明者として願書に記載することができますか?

できません。発明者は、実際の創作活動を行った自然人たる個人だからです。ただし、会社が、発明者から特許を受ける権利を譲り受けて出願人となることはできます。ちなみに、著作権の場合、一定要件下、法人が著作者となることができます(著作権法第15条)。

Q15.社名、店名、屋号でも商標登録することができますか?

社名、店名、屋号などの商号も、それを商品・役務について使用するときは商標にもなるので、商標登録することができます。ただし、使用する商品・役務を願書において具体的に記載する必要があります。

Q16.日本で特許を取得できましたので、外国出願しても権利化できますよね?

いえいえ、外国出願する時期によっては大いに問題ありです。 まず日本の特許出願日から1年以内であれば、外国出願の際に優先権主張することにより、当該国における審査においても発明の新規性や進歩性が日本の特許出願日を基準として判断されます。従って、あまり問題はありません。
しかし、1年を経過している場合は、日本の特許出願に基づいて優先権主張することができないので、その間にたまたま同一発明を他人が先に当該国で特許出願していれば、その他人によって権利化されてしまいます。また、その間に、自分もしくは他人が製品を日本国内もしくは外国で販売していたりすると、それらの事実によって発明の新規性が失われてしまい、出願が拒絶される可能性があります。また、日本の特許出願日から1年6月を経過すると、その特許出願が公開されるので、その事実によって新規性が失われ、ほとんどの国で出願が拒絶されます。
従って、外国出願は、日本における最初の特許出願日から1年以内に優先権主張を伴ってすることをお勧めします。

Q17.他人と共同で出願することを検討中ですが、留意すべきことはありますか?

特許出願にしても商標登録出願にしても共同で出願した場合、出願の取り下げや審判請求などの重要な手続も共同でしなければなりません(特許法第14条)。また、共同出願人の一人が第三者に名義変更(持分を譲渡)する場合、他の出願人の同意を得る必要があります(同第33条第3項)。権利化後も各共有者は、自己の持分を譲渡する場合だけでなく、第三者に使用権を設定・許諾するにも他の共有者全員の同意を得る必要があります(同第73条)。
更に、商標特有の留意点として、共有者の一人が登録商標と類似の範囲で使用することにより、誤認混同を生じたときは、商標登録全体が取り消されるという不利益を全員が被ることになります(商標法第51条第1項)。仮に登録商標と同一の範囲で各共有者が使用していたとしても、共有者の一人が低品質のものを市場に供給することにより、他の共有者までも信用を失うことになります。
従って、共同で出願するには、予め相手方としっかりとした信頼関係を築くだけでなく、将来の事まで入念に検討された共同出願契約を交わしておくのが望ましいです。

Q18.他人の特許出願より前に製品化していれば、権利行使されることはないですよね?

確かに”先使用による通常実施権”という制度が規定されています(特許法第79条)。
しかし、この権利は、当該他人(特許権者)が認めてくれなければ、侵害訴訟等において裁判所に認めてもらう以外ないものです。侵害訴訟は通常、弁護士手数料を含めると特許出願の何倍もの費用がかかります。そして、認めてもらえるためには、「他人の特許出願より前に製品化していた」ことの証拠が必要です。最も確実で客観的な証拠は、製品を入れた箱や、設計図・作業手順などを入れた封筒に公証人の確定日付印を押してもらったものですが、それとても他人の特許の請求範囲を想定して製品開発する訳では無いので、証拠不十分となることがあります。
従って、新たに製品開発したときは、まず特許出願しておくのが最善の防衛策といえるでしょう。

Q19.特許証(商標登録証)を紛失しました。再発行してもらうべきですか?

特許証、実用新案登録証、意匠登録証及び商標登録証を汚しまたは紛失したときは、いずれも特許庁に再交付(再発行)を請求することができます。これらの証書は、自社製品の宣伝広告に利用することができますし、登録日が記載されているので、目につくところに掲示しておくことで特許料(登録料)納付の期限を忘れなくするにも役立ちます。
しかし、特許証や登録証を所有していることがその時点で権利者であることの証拠とはなりません。特許証や登録証が無くても特許権(商標権)者であることに変わりは無いですし、侵害者に対して権利行使する場合には、特許(登録)原簿の謄本をもって権利者であることを立証することができます。

Q20.国際出願後、金額と銀行口座が表示された英文書簡が届きました。振込むべきですか?

ちょっと待ってください。国際出願すると、「登録して公開する。」など、あたかも正規の公的機関のように見せかけて出願人に振込を誘うような書簡が送られてくることがよくあります。特許にしろ商標にしろ国際出願を一元的に管理する正規の機関は、スイスのジュネーブに在る国際事務局すなわちWORLD INTELLECTUAL PROPERTY ORGANIZATION(略称WIPO)です。今一度、差出人の住所、名称、書簡の内容を吟味し、疑わしい場合は国際事務局か我が国特許庁に問い合わせたほうがよいでしょう。