特許、実用新案登録、意匠登録、商標登録に共通の用語を解説します。京都弁理士 矢野特許事務所

知的財産権に共通の用語

■趣旨

知的財産に関する用語は、初めて知的財産権を取得しようとする方にとっては、専門的で判りにくいものです。
少しでも理解を深めて頂いて有効な知的財産権を取得して頂くために、知的財産用語の説明をまとめた用語集を作成しました。
このページでは、特許・実用新案・意匠・商標に共通の用語の説明を掲載しています。

■用語の項目

特許管理人

日本国内に住所等を有しない者は、原則として日本国内に住所を有する代理人によらなければ、特許庁に対して手続をすることができません(特許法第8条)。この代理人は、不利益行為も含めて包括的な権限を有することから、通常の委任による代理人と区別するために特許管理人と称します。代理人として最も普通且つ適切な者が弁理士です。
日本人であっても在外者であるときは、特許管理人が必要とされます。
尚、特許管理士は、民間の団体が用いている名称であって、特許管理人とは異なります。

電子化

出願書類を特許庁のサーバーが受信できる形式に変換する作業のことを言います。特許事務所によっては、「電子手続費」とか「情報処理手続費」などと称しています。
特許、実用新案、意匠、商標の全てにおいて必要な作業です。
当事務所では、特許出願時には表や図面がある場合のみ、また意見書提出時には拒絶理由通知に対して反論の証拠や参考資料を提出する場合のみ、電子化費用を頂いています。

拒絶理由通知

特許出願された発明が他人の出願発明や公知技術と同一類似である等のために特許すべきでないと審査官が判断した場合に、その理由を出願人に通知する手続を言います。いきなり拒絶査定(拒絶の決定)をするのは出願人に酷であることから、拒絶査定をする前に出願人に意見を述べたり補正をしたりする機会を与えようというものです。
意匠・商標の場合も同様です。実用新案にはありません。

意見書

審査官の通知した拒絶理由に対して、出願人が意見を述べる書類を言います。実用新案は、実体審査が行われませんので、意見書を提出する機会はありません。

手続補正書

拒絶理由通知を受けた場合などに、拒絶理由を解消するために特許の場合は請求の範囲や明細書など、商標の場合は区分や指定商品などを補充・訂正する書類を言います。ただし、時期や内容に制限があります。

拒絶査定

出願を特許(登録)すべきでないとする審査官の決定を言います。これに対しては出願人は、拒絶査定不服の審判を請求することができます。実用新案は、実体審査が行われませんので、査定されることはありません。

特許査定/登録査定

審査官が出願について拒絶理由を発見しないときに発せられるもので、出願を特許(登録)すべきとする審査官の決定を言います。実用新案は、実体審査が行われませんので、査定されることはありません。

出願公開

審査段階にかかわらず出願の内容を公衆に知らせる制度を言います。特許出願の公開の時期は、特許出願の日(優先権主張を伴う出願にあっては最初の出願の日)から1年6月経過後です。1年6月としたのは、優先期間(=1年)及び公報の発行準備期間を考慮し、優先権主張を伴う特許出願とそうでない特許出願とを平等に扱うためです。商標登録出願の場合は、出願内容を秘密にしておく必要性に乏しいことから、出願後、公報の発行準備が整い次第速やかに公開されます。 なお、実用新案法及び意匠法には、出願公開制度はありません。

優先権

先にした出願(出願A)に基づいて優先権主張して優先期間内に新たに出願(出願B)したときに、出願Aに記載された内容については出願Bの特許要件(登録要件)が出願Aの出願日を基準として判断されるという特別の利益を言います。
出願Aも出願Bも日本国の特許出願であるときは、我が国特許法上、国内優先権と称し、出願Aは1年3月経過後に取り下げとみなされます。この場合の優先期間は1年です。
出願A及びBのいずれかが外国出願であるときは通常、パリ条約に基づく優先権です。この場合の優先期間は特許・実用新案が1年、意匠・商標が6ヶ月です。

先願主義

同一の保護対象については先に出願した者に対して特許(登録)を付与する主義を言います。発明日や使用日の先後は問題とされません。我が国の特許法、実用新案法、意匠法及び商標法は全て先願主義を採用しています。このため、保護対象が確定すれば1日でも早く出願する方が有利となります。
尚、先願主義に対比されるのが先に発明した者に対して特許を付与する先発明主義、及び先に使用した者に対して商標登録を付与する先使用主義です。

存続期間

いわゆる権利期間を言います。特許法等各法の条文には権利期間という用語は無く、存続期間で統一されています。存続期間は、権利設定の登録日から始まり、特許:出願日から20年、実用新案:出願日から10年、意匠:登録日から20年、商標:登録日から10年で終了します。特許・実用新案の場合は、終期の起算点が出願日ですので、例えば出願から2年後に権利設定の登録がなされたとすると、存続期間は18年となります。
但し、商標は存続期間を更新することができます。

判定

特許発明、登録実用新案、登録意匠、又は登録商標の権利範囲について特許庁に求めることのできる解釈を言います。
判定請求があったときは、3名の審判官によって判定されます。
判定は特許庁が行う一種の鑑定であって、法的拘束力はなく、不服申し立ての手段もありません。

専用実施権/専用使用権

専用実施権とは、特許権者等が特許発明等の実施に関して他人のために設定する排他的な物件的権利です。専用実施権者は、侵害者に対して差止請求権及び損害賠償請求権の行使をすることができます。商標の場合は専用使用権と称します。

通常実施権/通常使用権

通常実施権とは、特許権者等以外の者が特許権者等の許諾あるいは法律の規定に基づいて特許発明等の実施をすることのできる権利です。差止請求権や損害賠償請求権の行使は保証されてません。

間接侵害

特許発明を直接実施しているわけではないが、侵害が生ずるおそれが強い一定範囲の予備的行為であって、侵害とみなされるものを言います(特許法第101条)。

特許表示/登録表示

特許権者等が特許発明における物やその包装に付するように努めなければならないとされている「特許に係る旨の表示」を言います(特許法第187条)。「努めなければならない」ですから、我が国特許に関しては特許表示をしなくても罰則はありません。
但し、虚偽表示をすると罰せられます(特許法第198条)。
意匠、実用新案及び商標では、それぞれ意匠登録表示、実用新案登録表示及び商標登録表示と称します。

特許料/登録料

特許(登録)を維持するために特許庁に納付する費用のことを言います。特許の場合は特許料、実用新案・意匠・商標の場合は登録料と言います。
不動産の固定資産税のようなもので、特許・実用新案・意匠の場合は各年毎に金額が設定されています。固定資産税は不動産の価値によって毎年変動しますが、特許料・実用新案登録料は請求項の数によって額が決まるとともに、特許料は3年毎に約3倍、実用新案登録料は約2倍に上がっていきます。
尚、特許の場合、第1年~第3年までは特許査定時にまとめて納付することになっています。商標の場合、5年分または10年分を登録査定時に納付することになっています。

拒絶査定不服審判

特許出願、意匠登録出願又は商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定(審査官の結論)を受け、その査定に不服があるとき、請求できる審判をいいます(特許法第121条、意匠法、商標法第44条)。請求期間は、原則として、その査定の謄本の送達日から3月以内です。
特許出願の場合は、審判請求と同時に請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、不明瞭な記載の釈明を目的とする補正ができます(特許法第17条の2)。この補正が行われたときは、拒絶査定をした審査官がその特許出願を再審査することになります(審査前置制度:特許法第162条)。
意匠登録出願及び商標登録出願の場合も補正可能ですが(意匠法第60条の3/商標法第68条の40)、審査前置制度はありません。

無効審判

特許(登録)されるべきでないのに審査の過誤等により成立した特許、実用新案登録、意匠登録、商標登録を無効にするために請求できる審判をいいます(特許法第123条等)。
特許無効審決が確定したときは、無効理由が後発的事由である場合を除いて、特許権は初めから存在しなかったものとみなされます(特許法第125条)。実用新案権、意匠権及び商標権も同様です。この点、商標法における各種取消審判で商標権が取り消された場合に、審決が確定した時点または審判請求の登録の日で権利が消滅する(商標法第54条)のと異なります。

一事不再理効

「無効審判の審決が確定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない。」(特許法第167条)効力を言います。同じ手続きを繰り返す煩いを避けるとともに、矛盾する審決の発生を防ぐために設けられました。

両罰規定

法人の代表者、代理人、その他の従業者が、その業務に関し、特許権等の侵害、詐欺により特許等を受けること、秘密保持命令違反、又は虚偽表示をしたとき、その行為をした者とともに法人や本人にも罰金刑を科する規定をいいます(特許法第201条等)。犯罪行為の防止を強化する目的で設けられた規定です。