特許、実用新案に特有の用語を解りやすく説明してます。京都弁理士 矢野特許事務所

特許・実用新案の用語

■趣旨

知的財産に関する用語は、初めて知的財産権を取得しようとする方にとっては、専門的で判りにくいものです。
少しでも理解を深めて頂いて有効な知的財産権を取得して頂くために、知的財産用語の説明をまとめた用語集を作成しました。
このページでは、特許・実用新案に特有の用語の説明を掲載しています。

■用語の項目

発明/考案

発明(考案)とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいいます。記憶術、経済学の法則、人為的取り決めは自然法則ではありません。
発明はそのうち高度のものをいい、考案は高度でないものをいいます。
但し、実務上は発明と考案とで差異はありません。

請求項

出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項を記載する欄のことを言います。  我が国の特許制度では、「化合物」と「化合物からなる容器」、「照明装置」と「照明方法」、「物質」と「その物質からなる除草剤」などのように互いに関連する一定範囲の複数の発明を一つの特許出願に含めることができます。そして、特許請求の範囲(権利として請求する範囲)は、請求項ごとに分けて記載することすることが求められます。
実用新案も同様です。
[特許請求の範囲]
 [請求項1]光源からの照明光を一部遮光する照明方法。
 [請求項2]光源と光源からの照明光を一部遮光する遮光部を備えた照明装置。
 また、権利を広く請求するために請求項1を下記のように上位概念で記載して、明確にするために請求項2以下を下位概念で記載することも認められています。
[特許請求の範囲]
 [請求項1] ストッパーの表面に弾性体を備えた加圧装置。
 [請求項2] 前記弾性体がゴムである請求項1に記載の加圧装置。
 [請求項3] 前記弾性体がバネである請求項1に記載の加圧装置。

明細書

発明の詳細な説明や図面の簡単な説明を記載する欄のことを言います。
特許請求の範囲には、発明を特定するための必要最小限の事項しか記載しません。あまり余計なことを記載すると、特許庁審査官にとっては権利範囲を客観的に判断しにくくなりますし、出願人にとっては権利範囲を狭めることにもなるからです。
一方、それではどのような発明なのか分かりませんので、明細書に従来技術、発明の目的、発明の作用効果、実施例などを記載し、必要により図面と併せて説明するのです。
実用新案も同様です。

要約書

発明内容を要約して記載した書類のことを言います。但し、権利化にも権利範囲にも全く影響の無い部分です。
実用新案も同様です。

進歩性

公知の技術からは容易に考えつくことができないことを言います。発明は、ただ新規性がある(新しい)というだけでは特許にならず、新規性に加えて進歩性を有することにより特許されます。容易に考えつくことができるような発明に特許権を付与することは、かえって産業の発達を妨げるからです。
実用新案も同様です。

拡大先願(準公知)

後願が、その出願後に出願公開された他人の先願の明細書等に記載の発明と同じ発明について特許請求する場合、拒絶される旨の規定です(特許法第29条の2)。
我が国特許制度は、特許請求の範囲に記載の発明どうしが互いに同一である場合、重複特許(ダブルパテント)防止のため、先に出願した出願人が特許を受けることができるとする先願主義(特許法第39条)を採用しています。換言すれば、後願の発明が先願の明細書又は図面に記載はされているけれど先願の特許請求の範囲には記載されていなければ、「特許請求の範囲に記載の発明どうしが互いに同一」ではありませんので、後願は当該先願によって拒絶されないことになります。
しかし、先願の明細書等に記載された発明は出願公開により一般に公表され、後願が公開されても一般から見て新しい技術を公開するものではなく、このような後願に特許権を設定することは新しい技術の開示の代償として独占権を付与する特許制度の趣旨に反します。また、先願の特許請求の範囲は、明細書等の記載の範囲で補正により変動するところ、先願の地位を請求の範囲に限定しておくと先願の審査が終了するまで後願の審査ができないことになります。
以上のような理由から、先願の地位を特許請求の範囲だけでなく、明細書又は図面に記載の範囲まで拡大させることにしたものです。先願が公開されることを条件としますが、後願の出願時点では先願は公開されていませんので準公知とも言います。
この規定により、先願者は、出願発明に関連はするけれど権利化する必要の無い技術を明細書又は図面に記載しておくことで、別個に出願しなくても関連技術について後願の権利化を排除することができます。
実用新案も同様です。

出願審査請求

特許出願の審査を請求する特許出願に特有の手続のことを言います。実用新案、意匠及び商標にはありません。特許出願するだけでは、審査は行われず、出願と同時もしくはその後3年以内に審査請求をすることによって、審査されます(特許法第48条の2及び第48条の3)。
出願審査請求は、特許出願人はもとより、出願人以外の第三者でも行うことができます。第三者がその発明を既に実施しているなどの理由で、その特許出願の最終処分を早期に知りたい場合があるからです。
特許出願と審査請求との関係について更に詳しくお知りになりたい方は、[Q&A]のQ2をお読みください。

技術評価

新規性、進歩性、先後願に限定された考案の有効性に関する評価であって、特許庁による一種の鑑定をいいます。実用新案は、新規性等の要件が審査されることなく登録されることから、権利の有効性に関する客観的な判断材料として導入されたものです。実用新案権者又は専用実施権者は、実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、侵害者等に対し、その権利を行使することができません(実用新案法第29条の2)。

補償金請求権

所定の警告をした後、特許権発生前に業として出願発明を実施した他人に対して実施料相当額の補償金を請求することができる権利を言います(特許法第65条)。
この警告をするだけでも競業者を市場から排除することができる場合があります。
ただし、この請求権は、特許権発生後でなければ行使できません。

審査前置

拒絶査定不服審判の請求と同時に明細書、特許請求の範囲又は図面について補正があったとき、拒絶査定をした審査官にその特許出願を再審査させることをいいます(特許法第162条)。
審査官は出願内容をすでに理解しており、補正により拒絶理由が解消し特許査定にしてよい場合があることから、審理促進のために設けられた制度です。再審査しても依然として拒絶理由が解消していない場合は、いよいよ審判官により審理されることになります。