商標権の効力が及ぶ範囲:専用権と禁止権

商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標を独占的に使用することができます(商標法第25条)。これを専用権と言います。商標権者は、登録商標の使用が保証されているとともに、他人の使用を排除する権利をも有しています。
さらに、その同一範囲だけでなく、他人によるその類似範囲の使用を排除することができます(商標法第37条)。これを禁止権と言います。類似範囲で他人が使用すると紛らわしくて出所の混同が生じ、登録商標の信用を喪失するばかりか、消費者も不利益を被るからです。
従って、禁止権の範囲で商標権侵害が生じたときは、専用権の範囲での侵害に対するのと同様に、商標権者は差止請求権や損害賠償請求権を行使することができます(商標法第36条等)。
また、禁止権の範囲に他人の専用権が設定されると、禁止権や専用権の意義が失われるので、範囲が重複しないように先行する登録商標の類似範囲に属する商標登録出願は審査段階で拒絶されます(商標法第4条第1項第11号)。
類似範囲には、商標自体が類似する場合と、商品が類似する場合と、両方が類似する場合とがあります。
ところで、禁止権となる類似範囲は、特許請求の範囲のように商標権者が自分で請求して画定するものではなく、かといって法律で類似範囲が定義されているわけではありません。類似は比較対象に基づく相対的概念だからです。とはいうものの、商標登録出願の審査は公平を期す必要があることから、一応の目安となる基準が特許庁にて作成され公開されており、審査段階ではこの審査基準に基づいて判断されます。
一方、審査基準は審査の便宜のための画一的なものでして、全てがこれに当てはまるわけではないので、権利侵害などの訴訟段階では実際の取引事情などを考慮して個別に判断されます。

Comments are closed