自社製品の紹介記事が仇

令和元年5月30日判決言渡

平成30年(行ケ)第10176号 審決取消請求事件

1.事件の概要

 被告は、登録商標「リブーター」(平成25年2月8日出願)の商標権者であり、原告は、同商標権の指定商品のうち「再起動器を含む電源制御装置」について商標の登録を無効とするとの審決を求めて審判請求したところ、特許庁は「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をしました。  本件は、その審決の取消訴訟であり、裁判所は、  

「リブーター」は,再起動装置の品質,用途を普通に用いられる方法で表示する語と認められるから,指定商品が再起動装置又は再起動機能を有する電源制御装置である場合は,本件商標は,商標法3条1項3号の商標に該当するというべきである。

 として、審決を取り消す判決をしました。  被告商標権者の製品の紹介記事が商標法3条1項3号該当の証拠として採用されている点が興味深いので、この点を中心に説明します。

2.被告商標権者(明京電機)の製品の紹介記事

 甲37:  セキュリティ産業新聞 平成22年5月10日(セキュリティ産業新聞社発行)  「明京電機 河川監視等の屋外監視システムに役立つリブーターを提案。PING監視機能,電源制御機能の利用により,遠隔地からフリーズした装置の復旧が可能。ルータやカメラのシステムダウン時間を最小限に抑制する。」(最下段「明京電機」のブースの紹介記事)

 甲39:  セキュリティ産業新聞 平成24年9月10日(セキュリティ産業新聞社発行)  「明京電機は従来からIPカメラシステム運用の問題とされるカメラ,ルーターのフリーズを自動検出する「リブーター」製品を紹介」(左欄4段目)

 甲40:  セキュリティ産業新聞 平成24年11月25日」(セキュリティ産業新聞社発行)  「明京電機は,万一のフリーズ発生時でも自動リブート,遠隔リブートによってシステムダウンを最小限に抑止できる「リブーター」を紹介(=写真⑪)。」(左欄下から3段目)

3.教訓

 前記紹介記事のうち、甲39、40はリブーターの文字が括弧で挟まれているので反論の余地はありますが、甲37はまさに普通名称的な書き方です。

 もし、リブーターが被告の造語だとしたら、新聞で紹介される前に商標登録出願しておくことにより、同新聞の紹介記事が証拠として提出されることは無かったでしょう。  自社製品が新聞や雑誌に掲載されるときは、製品名の用い方によく注意すべきです。また、自社が直接ホームページで紹介するときも同様です。

 尚、甲37、39、40は、原告が3号該当の証拠として提出した多数の文献の一部であり、これらが提出されていなくても他の証拠によって同じ判断がなされた可能性はあります。

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