欧州特許出願:補正の難易と職権訂正の是非

欧州特許出願において明細書や特許請求の範囲を補正しようとする場合、その内容的許容範囲は、かなり限定されています。

例えば、日本国出願や米国出願の場合、実施形態や実施例に記載した事項を抽出して特許請求の範囲に加えることにより、拒絶理由の引用文献との差別化を図ることもあり得ますが、欧州特許庁の審査官は、そのような補正は実施形態等の一部のみを恣意的に抽出するものであるとして、認めません。欧州特許出願は、欧州各国の間の合意のうえ成立した条約に基づくので、どの国にも受け入れてもらえるように制限したものと思います。

一方、欧州特許庁の審査官は、こちらが頼みもしないのに、誤記の訂正や、より判りやすい表現を提案してくることがあります。

例えば、審査官が特許付与決定の心証を得たとき、審査官は、特許付与決定前に特許しようとする明細書及び特許請求の範囲を出願人に送付してくれます(欧州特許条約規則71(3))。

このとき送付される明細書及び特許請求の範囲に、こちらが提出していない補正がされていることが少なからずあります。大抵は審査官も内容を良く理解した上で提案してくるので、そのまま承諾してよいのですが、たまに審査官が誤解して権利範囲がずれていることがあり、そのようなときは元の明細書等に戻すように現地代理人を通じて要請しなければなりません。
クライアントにしてみれば、おかげで現地代理人の費用(場合により、国内代理人の費用も)が増し、余計なお世話というわけです。

審査官の提案だからといって安易に承諾するのではなく、入念に吟味する必要があります。

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