商標:記述的商標の使用による識別性

棒アイス「あずきバー」の商標登録を認めなかったのは不当だとして、井村屋グループが知財高裁に特許庁の審決取り消しを求めた訴訟で、2013年1月24日請求を認める判決が言い渡されました。

商標法では「その商品の原材料や形状などを普通の方法で表示する商標」は、識別性が無い(どの会社の商品であるのか区別が付かない)という理由で登録が認められていません(商標法第3条第1項第3号)。

しかし、今回の判決は、継続して使用されていることにより井村屋の商品として広く認識されて識別性を有するに至ったものであるから、法第3条第2項に基づき登録を認めるべきというものです。

「あずきバー」は、原材料を示す「あずき」と棒形状を示す「バー」を単につなげただけなので、審査基準からすると拒絶されて然るべきでして、審査段階だけでなく審判でも拒絶されたにもかかわらず、使用による識別性が認められるべきとして井村屋グループが提訴したものです。

本件商標は、2010年に出願されており、上記の通り審査、審判を経て2012年8月に同社が提訴しています。同社は「あずきバー」についていきなり使用による識別性を認めてもらおうとして2010年に商標出願したのでしょうか?

そうではないようです。

先ず2005年に赤く太い帯上に棒アイス自体の画像と「あずきバー」の文字を表した包装のデザインを商標出願しています。これは「普通の方法」で表示したものでないので、審査段階で登録が認められています。

その後、「あずき」の文字を大きく表し、「バー」の文字を著しく小さく表した縦書きの商標と、標準文字からなる本件商標とを同日に出願しています。前者は、審査段階では拒絶されていますが、同社が審判請求して登録となっています。

このように元々単独では識別性の無い商標であっても図形、写真、ロゴなど固有のマークと組み合わせたものを先に登録しておき、売り上げが伸びて知名度が上がってから、文字のみで出願し、権利化を図るということは、よく採られる商標戦略です。

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