特許出願後の模倣に対する警告

中小企業や零細企業は、製品開発から特許出願に至るまでに投資した費用を早期に回収するために、出願後すぐに製品を市場に出すことが多いようです。せっかく市場に出しても他社から類似製品が安価で出回っては元も子もありません。
そこで、他社に対する侵害警告をいつ、どのような内容で送付できるか時系列的に以下に整理してみました。

出願日以後1年6ヶ月経過し、出願公開されるまで
この時期は、未だ権利が発生していないので、「貴社の実施は権利侵害です。」という内容の警告を送付することはできません。せいぜい「弊社が出願中です。」と通知できる程度に止まります。
出願が公開されていないわけですから、製品を市場に出す前でしたら、改良発明を発案し、先の出願と合わせて強力な特許権取得を目指せる可能性もあるので、むしろ何も通知せずに伏せておいた方が良い場合もあります。

出願公開後、権利化まで
既に発明内容が公開されているので、何も通知せずに伏せておくことの利点はほとんどありません。
かといって、未だ権利が発生していないので、「権利侵害です」という内容の警告を送付することはできません。
そこで、「本件特許出願が特許されたあかつきには、特許法第65条に基づく補償金を請求することになります。」旨の警告書を送付することになります。この程度の内容でも相手方には十分な衝撃となり、相手方が実施を中止してくれることもあるので、特許性の有無に関わらず送付することをお勧めします。
尚、補償金は実施料相当額でして、医薬品などの特殊な分野を除いて通常は売値の2~7%です。

権利化後、権利消滅まで
特許権が発生していますので、堂々と「貴社の実施は権利侵害です。」という内容の警告を送付することができます。

権利消滅後
特許権が存続期間満了、維持年金不納などにより消滅した後であっても、存続していた期間中の実施に対して時効が成立するまでは損害賠償を請求することができますので、このことについて警告を送付することができます。特許権侵害は不法行為とされており、その時効消滅期間は、被害者又はその法定代理人が損害又は加害者を知った時から3年と規定されています(民法第724条)。

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