特許請求の範囲の重要性と訂正時期

特許権を侵害していると、他社から警告を受けたり、訴えられたりしても、自社製品が当該特許権の範囲に属していないという確信があれば、その旨を回答するだけで足りますが、多くの場合はそうではなく、形式的に属していたり、グレーゾーンであったりします。

このような場合、相手の特許権の範囲が、特許明細書に開示されている実施例に比べて広すぎたり、新規性の無い構造や組成等を含んでいたりするときは、その特許を無効にするための審判を請求することができます。

一方、特許権者は、無効審判に対抗するために、同審判において特許請求の範囲等の訂正を請求することができます。
また、無効審判が請求される前に先手を打って、あるいは無効審決後に審決の取消を求める訴訟とともに、訂正審判を請求することもできます。

しかし、 このように無効審決の取消訴訟提起後、訂正審判の請求を許容すると、事件が再度特許庁の審判に差し戻されてしまうことから、紛争解決が非効率の状態が続いています。

そこで、2011年6月8日に交付された特許法の改正では、無効審決の取消訴訟提起後は、訂正審判の請求が認められなくなりました。

従って、特許権者側としては特許請求の範囲に記載された各請求項の有効性を無効審判継続中に的確に判断しなければならなくなり、特許請求の範囲の記載の重要性が一層高まりました。

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