特許権侵害と過失の推定

他人の特許権、意匠権(秘密意匠を除く。)、商標権を故意又は過失により侵害したときは、自社の実施が差し止め請求の対象となるばかりか、当該他人に損害を賠償する責任があります。また、故意に侵害したときは刑事罰の対象ともなります。

故意侵害の場合に前記の責めを負うのは当然にしても、過失侵害は新製品、新方法を実施する全ての事業体が覚悟しておく必要があります。
なぜなら、他人の特許権、意匠権(秘密意匠を除く。)、商標権を侵害したときは、過失があったものと推定されるからです(特許法第103条、意匠法第40条、商標法第39条)。

しかも実施の前に先行技術や先行商標の調査をしなかったために、他人の権利の存在を知らなかったとか、自社は中小企業・零細企業であるから特許法などの知識が無かったとか、市場に出回っている他人の商品に特許表示や商標登録表示が無かったとかは、前記の推定を覆す理由として認められません。従って、実施者にとってはかなり厳しい規定です。

ただし、十分な調査をしても危ない他人の権利を発見できなかったり、弁護士や弁理士から非侵害の鑑定を受けたりしたにもかかわらず、結果的に権利侵害となったときは、侵害者に故意又は重大な過失がなかったと判断されて、実施料相当額を超える損害の賠償の責任を免れる可能性はあります(特許法第102条第4項第2文)。

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