特許請求の範囲の書き方

(請求の範囲の書き方については、少なからず書籍が市販されており、インターネット上でも複数のサイトで公開されていますので、ここでは私がどのように書いているかを簡潔に提示します。)
先ず、従来技術と比較して発明の本質がどこにあるかを把握します。これが大切です。発明が従来技術の課題を何故、どのようにして解決しているのかをよく見極めます。
特許請求の範囲は、権利化後は特許発明の技術的範囲を定める根拠となる部分ですので、これを広くかくと権利範囲も広くて強い権利となります。「広く書く」とは、たくさん書くというのとは異なります。例えば、課題を解決するための不可欠な構成要素が計時回路であるのに、開発製品の時計がたまたま計時回路だけでなく新しい演算回路を含むからといって、演算回路まで請求項に含めると、そのような演算回路を有しない時計は権利範囲外となります。

しかし、広いほど、審査官が先行技術を見いだしたり、実施形態や実施例に比べて範囲が広すぎるとして拒絶する可能性も高くなります。

そこで、請求項1などの独立請求項は、わかっている従来技術と抵触せずに課題を解決できると思われるぎりぎりの広い範囲の発明の構成を記載します。このために用語はできるだけ上位概念で表現します。例えば、電池に対して電源、コンプレッサーに対して圧力ガス源などのように。 上位概念で表現できる適当な用語が無い場合などに、構成要素を特定するために機能的表現を用いることもあります。機能的表現とは、例えば「・・・会員の新規登録を受け付けて会員データベースに記録する登録手段と、登録された会員に・・・送信する送信手段と、・・・」という具合です。
機能的表現を用いる場合は、発明者から提供された具体例の他に同じ機能を果たす構成要素の有無を検討し、できるだけ実施形態が複数になるように記載します。
「物」の発明の場合、各構成要素はできるだけ受動態で表現します。逆に「方法」の発明の場合は、操作する側の立場にたって能動態で表現します。こうすることで理解しやすく、また外国出願の際に翻訳しやすいからです。
可能な限り積極的に表現します。消極的表現では範囲が不定となるからです。但し、無接点スイッチ、消音銃、非凍結液、無端運動のように消極的表現でも明確であれば使用します。
現代的且つ一般的な表現にします。そのほうが審査官や裁判官に理解してもらいやすいからです。

次に、独立請求項に従属する下位概念の請求項を記載します。従属請求項をどれだけ設けるかは、クライアントの戦略にもよりますが、基本的には下位になるほど上位よりも特許可能性が高くなる、つまり概念がより明確になるようにあるいは作用効果が顕著になるようなものを設けます。
従属請求項の数に応じて審査請求時及び権利化後の年金納付時の印紙代が増すので、従属請求項を設ける意義をよく考えます。

そして、最後に審査官や競業者の立場で読み、不明瞭な記載がないか、代替部品などで逃れられることがないかを検討します。

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