著作権か産業財産権かの選択

ある物を創作したとき、それが著作権法でしか保護されないか、又は特許法、実用新案法、意匠法、商標法などの産業財産権法でしか保護されないものであるなら、迷うこと無くそれぞれの法域で最善の手続きをすればよいでしょう。

しかし、いずれの法域でも保護されうる場合、著作物と捉えて処理するか、発明(考案)、意匠、商標といった産業財産権の保護対象と捉えて処理するか、あるいは両方で厚く保護するかは、費用対効果を考えて選択すべきでしょう。

以下、両者を対比させましたので、参考にしてください。

1.保護対象

著作物は、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。権利範囲は創作時を基準として判断されます。アイデアを表現したものは対象になりますが、アイデア自体は対象ではありません。プログラムであっても創作的に表現したものは対象になりますが、プログラム自体は対象ではありません。いずれにしても権利侵害であるか否かを判断するにあたり、どの部分が「創作」であるのか「表現」であるのか客観的に特定することが難しいので、それらの点が紛争の原因になることが多いです

一方、特許権、実用新案権は、アイデア自体を保護対象とします。その範囲は、「特許(実用新案登録)請求の範囲」として文章で記載されているので、比較的明確です。意匠権は著作権と重なる領域が多いですが、著作権と異なり物品に表現されている必要があります。また、商標権も使用する商品・役務を指定する必要がありますが、創作である必要はありません。意匠も商標も類似範囲で争いになることが多いですが、特許庁の審査基準が公表されているし、判例も蓄積されているので、著作権よりも分かりやすいように思います。尚、商標の類似範囲は、権利化後に長く使用して信用が化体するほどに拡がる可能性があります。

2.権利の発生

著作権は、著作物を創作したときに発生します(著作権法第17条)。文化庁に著作者の実名、創作年月日などを登録することができますが、同じ物を先に創作した人がいるかどうかなどの審査はなされません。従って、登録されている著作権については登録状況検索システムで検索できますが、登録されていない著作権の方が圧倒的に多いようです。

一方、産業財産権として保護されるためには、法定の書式に従って特許庁に特許出願、意匠登録出願又は商標登録出願といった出願手続きをし、先か後かや、新規性などの審査にパスして登録されなければなりません(特許法第66条、意匠法第20条、商標法第18条)。従って、一旦登録されれば権利として安定です。実用新案登録出願の場合は無審査で登録されますが(実用新案法第14条)、権利を有効に維持するには新規性などの要件を満たす必要があります。産業財産権は、前記の通り全て出願手続きを経るので、登録の有無にかかわらずデータベースに格納されており、出願から1年半経過すれば特許情報プラットホームにて検索可能です。

3.権利の期間

著作権は著作者の死後(無名又は変名の著作物は公表後)50年、映画の著作物の場合は公表後70年までです(著作権法51条、52条、54条)。

特許権(実用新案権)は出願日から20年(10年)、意匠権は登録日から20年、商標権は登録日から10年です(特許法第67条、実用新案法第15条、意匠法第21条、商標法第19条)。商標権は何回でも更新し、半永久的に保有することができます。

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