特許:訂正審判

[定義]
特許の訂正審判とは、特許権者が明細書、特許請求の範囲又は図面について訂正することを請求する手続を言います。

[訂正審判の趣旨]
特許権を行使する際に、特許の一部に不備があると、そのことを理由に全部について特許無効審判を請求されるおそれがあります。そこで、そうした反撃に備えて自発的に不備を解消しておこうとする特許権者のための制度です。
尚、無効審判が既に請求されている場合には、その審判手続の中で訂正請求を認め、無効審判の審理と併せて審理されます。従って、無効審判の継続中に訂正審判を請求することはできません。

[訂正審判の要件]

1.訂正は次の事項を目的とするものに限られます。
(1)特許請求の範囲の減縮
(2)誤記又は誤訳の訂正
(3)明瞭でない記載の釈明

2.いずれの訂正も願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてしなければなりません。つまり、実施形態の追加や変更はできません。ここで、「願書に添付した明細書等」は、出願時のものではなく登録時のものです。

3.実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであってはなりません。

実質上拡張のため訂正が不可とされた例
a.「加熱下において」を「100℃以下の温度において」と訂正すること
∵全く加熱しない場合も含むため。
b.「エボナイト」を「硬質ゴム」と訂正すること
∵エボナイト以外の材質も含まれるため。

実質上変更のため訂正が不可とされた例
温度「華氏3~5度」を「摂氏3~5度」と訂正すること

4.上記1.(1)及び(2)を目的とする訂正は、訂正後の特許請求の範囲に記載の発明が出願時に独立して特許性を有しているものでなければなりません。

[訂正審判の効果]
訂正すべき旨の審決が確定したとき(訂正が認められたとき)は、訂正後の明細書等により特許出願、出願公開、特許査定及び特許権設定登録がされたものとみなされます。

以上の通り、特許権設定登録後は、特許請求の範囲を拡張したり変更したりすることはできませんので、特許請求の範囲の記載がどれほど重要であるかお分かり頂けると思います。

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