特許権侵害:損害賠償の消滅時効

特許権侵害に基づく損害賠償の請求権には消滅時効があります(民法第724条)。
民法第724条には、「・・損害賠償の請求権は、被害者・・・が損害及び加害者を知った時から3年間・・」と規定されています。

この消滅時効の起算点として民法第724条にいう「被害者が損害を知った時」とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解されています(最高裁平8(オ)2607)。
単に「不法行為が存在する可能性のあることを知った時」とすると、損害賠償請求権を時効で消滅させないために、権利者が損害の発生の有無を常時調査せざるを得なくなり、権利者に、このような負担を課することは不当だからです。

従って、これを特許権侵害に当てはめてみると、特許権者が単にライバル会社の製品を購入したり、展示会で見たり、カタログを入手したりするだけでは「損害及び加害者を知った時」にはなりません。

当該他社製品を特許請求の範囲と照合して、同製品が特許発明の技術的範囲に属し、当該他社の行為が特許権を侵害する行為であることを”現実に認識したときをもって「損害及び加害者を知った時」となります。

尚、特許権の設定登録前の出願公開段階で発生する補償金請求権については、消滅時効の起算点は、特許権の設定の登録の日となります(特許法第65条第6項)。

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