特許:意見書/実験・理論

特許出願をするときは、誰でもできる限り広い権利を取得しようとして、特許請求の範囲をできる限り上位概念で表現します。
例えば化合物Aと化合物Bがいずれも抗アレルギー作用を有することを見いだし、化合物Aと化合物Bの共通点がインタロイキン-X阻害作用を有するとき、通常は特許請求の範囲を次のように記載します。

[特許請求の範囲]
[請求項1] インタロイキン-X阻害作用を有する化合物を有効成分とする抗アレルギー剤。
[請求項2] 前記化合物が化合物A及び化合物Bから選ばれる一種以上である請求項1に記載の抗アレルギー剤。

しかし、明細書には化合物Aと化合物Bのみについて抗アレルギー作用を確認した実験例が記載されているだけで、インタロイキン-X阻害作用を有する化合物が抗アレルギー作用を有することの理論的な説明もなされていないとします。
この場合、インタロイキン-X阻害作用を有する化合物であっても化合物Aと化合物B以外のものは抗アレルギー作用を有するか否か判らないため、審査段階で実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)として拒絶理由が通知されます。

これに対しては、インタロイキン-X阻害作用を有する化合物であって、化合物Aや化合物Bとは基本骨格が異なるものについての実験データを意見書とともに提出することにより、一般にインタロイキン-X阻害作用を有する化合物であれば抗アレルギー作用をも有することを証明できれば、拒絶理由が解消します。

また、インタロイキン-X阻害作用を有する化合物が 抗アレルギー作用をも有することの理論説明を意見書で行い、それが出願時に技術常識であったことを示した場合にも拒絶理由が解消します。ただし、この対策は、「技術常識であったなら、本発明は進歩性が無い。」として新たな拒絶理由が生じる、すなわちやぶ蛇となる可能性があります。

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