特許:明細書の補正の事例

明細書、特許請求の範囲、図面などの実体的内容については、特許出願後であっても願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であれば補正することができます。

新規性違反や進歩性違反を理由とする拒絶理由通知を克服するために、特許請求の範囲を補正するときは、一般には上位概念を下位概念に限定(例えば弾性材料をバネあるいはゴムなどの具体物に限定)したり、当初の請求の範囲に挙げられていなかった構成要素や工程を追加して限定したりします。つまり積極的に限定します
しかし、逆に「特定の構成要素や工程を含まない」というように、消極的に限定することも可能です。

例えば、当職の経験した事例では、引用文献が原料を一旦常温で圧延した後に加熱加圧していたのに対して、請求の範囲を「未加圧体を加熱して加圧成形」と限定するとともに、本発明では常温で圧力がかかっていないので原料が破砕しないことを主張しました。すると、補正が認められ、引用文献との差異(進歩性)も認められて特許査定となったことがあります。

また、ある種の金属ろう材がある成分を含まない合金であると限定することにより、補正が認められ、これらの金属を含むろう材を開示していた引用文献との差異(進歩性)も認められて特許査定となったこともあります。

ところで、この「・・・に記載した事項の範囲」とは、明示的に、即ち文章としてそのまま記載されている事項だけでなく、記載から自明な事項も含まれます

例えば、当職の経験した事例では、「X方向の長さがY方向に比べて均一」及び「Y方向の長さはばらつきを有する」と記載されていたので、請求の範囲を「Y方向長さが不均一」と限定することにより、補正が認められたことがあります。
同時に、引用文献との差異(進歩性)も認められて特許査定となりました。

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