国内優先権の注意点

先の出願(出願A)の明細書には具体的な実施形態を記載せずに、優先権主張した後の出願(出願B)で具体的な実施形態を追加したとします。

そして、出願Aの明細書からは当業者が発明を実施することができず、追加した実施形態を読んで初めて当業者が出願発明を実施することができる場合、出願Bは国内優先権の効果を得ることができません。

従って、出願Aの出願日と出願Bの出願日との間に、同一発明を明細書に開示した他人の出願が存在したり、同一類似の技術が公知になったりすれば、出願Bは拒絶されることになります。
最悪の例は、出願Aの後に具体的な実施形態を自分で公表し、それを出願Bに含める場合です。この場合は、公表日から6ヶ月以内に新規性喪失の例外規定の適用を受けて出願Bを行わなければ、自分の公表によって拒絶されてしまうことになります。

特許制度は発明公開の代償として特許権を付与するものであり、特許法は「当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載する」ことを規定しています(第36条第4項)。当業者が実施できる程度に記載されていなければ、発明を公開したと言えず、上記の場合は出願Bの時点で出願発明を公開したと言えるからです。

従って、化学や生物の分野の場合、先の出願の段階から作用効果を実証する実験データを含めておくのが望ましいです。

Comments are closed