特許:明細書の補正と自明な事項

明細書、特許請求の範囲、図面(以下、「明細書等」)などの実体的内容を補正するときは、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければなりません(特許法第17条の2第3項)。

ところで、補正しようとする事項に該当する文言が、出願当初の明細書等にはっきりと記載されている場合は、少なくとも補正自体に関してはリスク無く(補正の要件違反として拒絶されることなく)行うことができます。

しかし、当初の明細書等に明記されていない事項を補正によって記入したい場合や引用文献との差別化のためにせざるを得ない場合があります。

審査基準には”「当初明細書等に記載した事項」とは、明示的な記載が無くても「当初明細書等の記載から自明な事項」も含む。”とあります。

ここで自明か否かは一般人ではなく当業者の立場で判断します。

そこで、”自明である”ことを導くために、当初明細書等から論理的に導く、あるいは当該技術分野の大辞典、大事典や教科書的な書籍を利用するなどの方法があります。
前者の場合はそのような論理を意見書で展開し、後者の場合は意見書に根拠となる大辞典や書籍の写しを添付します。

例えば、当職の経験した前者の事例としては、「X方向の長さがY方向に比べて均一」及び「Y方向の長さはばらつきを有する」と記載されていたので、請求の範囲を「Y方向長さが不均一」と限定することにより、補正が認められ、特許査定されたことがあります。

また、後者の事例としては「臓器」の範囲に心臓、肝臓などの「臓」とつくものだけでなく、医学大事典を根拠に皮膚や角膜も含まれるように補充したうえで、特許査定されたことがあります。

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