拒絶理由通知の多くは、複数の公知文献が先行技術として引用され、それらに基づいて出願発明が容易に発明することができたものであるから、特許性が無い(特許法第29条第2項)というものです。
例えば出願発明の構成が、
「歪みセンサの出力を高度信号に変換する演算回路Aと、計時回路Bとを半導体薄膜で形成したことを特徴とする高度計付き電子腕時計。」
であるとしましょう。
そして、審査官が以下の引用文献1と引用文献2とを引用し、
「引用文献1の演算回路を引用文献2の計時回路とともに半導体薄膜で形成することは容易である。」
という拒絶理由を挙げたとします。
引用文献1:「センサの出力を高度信号に変換する演算回路A’を備えた高度計。」
引用文献2:「計時回路B’を半導体薄膜で形成した電子腕時計。」
これに対して、しばしば発明者やクライアントから頂くコメントは、
「引用文献1には計時回路Bが記載されていない。引用文献2には演算回路Aが記載されていない。従って、本発明は新規性を有する。」
というものです。
しかし、これでは残念ながら拒絶査定になってしまう可能性が高いです。
何故なら、審査官は、新規性違反(特許法第29条第1項各号)ではなく、引用文献1と引用文献2との組み合わせに基づいて進歩性違反(同第2項)で拒絶しているわけです。
審査官は本発明の構成要素A及びBの全てが一つの引用文献に開示されているわけではないから、本発明が新規性を有することは十分承知しているのです。
従って、上記拒絶理由に反論するには例えば、
「引用文献1には、演算回路A’を半導体薄膜で形成すると引用文献1の課題解決のために不利である、と記載されており、引用文献2の腕時計に適用する動機が無い。」とか、
「引用文献1の演算回路A’をそのまま引用文献2の計時回路B’とともに半導体薄膜で形成することは技術的に不可能である。」とか、
「引用文献1の演算回路A’を引用文献2の計時回路B’とともに半導体薄膜で形成すると引用文献2の作用効果を達成することができなくなる。」
のように二つの文献の組み合わせに困難性があることを論理的に記載する必要があります。
そのような論理が展開できれば特許査定となります。
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