特許:国際出願の利害得失

国際出願とは、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty:PCT)に基づいて、願書を自国特許庁に提出することで、全てのPCT加盟国に対して特許出願したのと同じ効果を与える出願手続を言います。

日本人の場合は、日本語で願書、明細書、特許請求の範囲を作成して、日本の特許庁に提出することができます。それによって、1件の国際出願が約140カ国への出願とみなされます。

その後、各国で権利化するには、各国に移行手続(翻訳文提出)をする必要がありますが、その期限は国際出願日又は優先日(日本の国内出願を基礎として優先権主張して国際出願した場合)から30ヶ月ですから、十分な時間的余裕があります。

国際出願をすることなく、いきなり各国毎に外国出願をし、どこかの国の審査で強力な先行技術が発見されると、同じ先行技術が他の国の審査でも引用されますので、出願費用(1カ国当たり30~50万円)が全部無駄になります。

 これに対して、国際出願をすると、国際調査機関が日本の特許公報だけでなく海外文献も含めて先行技術調査をし、新規性や進歩性などの特許性に関する見解を出してくれます。従って、この見解書を参考にして現実に各国に移行するかどうかを判断し、経済的リスクを軽減することができます。

 国際出願は、印紙代等の公的手数料だけで22万8400円以上(平成22(2010)年3月15日現在)かかります。つまり、結果的に各国に移行するのであれば、最初から各国毎に外国出願する場合に比べて、国際出願の分だけ費用が増すことになります。

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