審決又は取消決定に対する訴えの期限

特許、実用新案登録、意匠登録、商標登録の各出願は、先願主義が採用されているため、1日でも特許庁に早く出願した方が有利であり、同一の保護対象(出願の対象)であれば、後の出願は全て拒絶されます。そして、民法においては、「隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達したときからその効力を生ずる。」(民法第97条第1項)と規定されています。これを到達主義と言います。従って、この原則からすれば、出願書類が現実に特許庁に到達した日が出願日と認められます。

しかし、特許庁の出願窓口は本庁(東京都)にしかないため、原則を貫くと都内在住の出願人と地方在住の出願人とで不平等を生じます。

そこで、この不平等を無くすため、出願書類のほか、特許法等の規定により特許庁に提出する書類であって提出期間が定められているものについては、郵便局に差し出した日時に特許庁に到達したものとみなされます(特許法第19条)。これを発信主義と言います。
従って、前記の各出願後に審査官からの拒絶理由通知対して意見書や手続補正書を提出する場合、審査官の拒絶査定に対して不服の審判を請求する場合、他人の特許や商標登録に対して異議申し立てをする場合などは、期限内に最寄りの郵便局に書類を差し出せばよいのです。ただし、現在は、出願から拒絶査定に対する審判まではインターネットを介してオンラインで提出することができますので、郵便局に行く機会はかなり減りました。

ところが、審決(審判官の決定)や特許取り消し決定に対する訴えは、東京高裁内の知財高裁が専属管轄とされているにもかかわらず(特許法第178条第1項)、原則通り到達主義で扱われ、しかも審決又は決定の謄本の送達日から30日が期限とされています(特許法第178条第3項)。オンラインやFAXで提出することはできず、直接持参するか郵送するかしかありません。審決又は決定まではずっと発信主義が採用されているので、うっかり期限を徒過しないように注意してください。期限を徒過した訴状は、内容が審理されることなく却下されてしまいます。郵送の場合は前日までに書留(前日の場合は速達書留)で郵便局に差し出した方が無難です。

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