知的財産の権利侵害警告書の送り先

特許権者は、事業として特許発明の実施をする権利を専有します(特許法第68条)。実用新案権者、意匠権者または商標権者の場合は、登録実用新案、登録意匠(類似意匠も含む)または登録商標に関して同様です(実用新案法第16条/意匠法第23条/商標法第25条)。

特許法上で発明の実施とは、物の発明の場合であれば物の生産、使用、譲渡等をする行為をいいます(特許法第2条第3項)。実用新案法、意匠法も同様です。商標法では商標の使用とは、商品又は商品の包装に商標(標章)を付する行為、付したものを譲渡等する行為をいいます(商標法第2条第2項)。

従って、製品(商品)の製造者だけでなく、製品(商品)を譲渡等する流通業者や卸業者、並びにユーザーも、その製品(商品)が特許発明等に係わる限り、特許権等を侵害していることになります。

しかし、例えば特許権者等である自社と競争関係にある他社の取引先に権利侵害の警告を発したり、取引先に当該他社が権利侵害している旨を通知したりするときは、その警告や通知自体が不正競争行為と認定される可能性がありますので、要注意です。

すなわち、不正競争防止法第2条第1項14号には「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」を不正競争行為と規定しています。そして、結果的に特許権等が有効であって、侵害裁判において権利侵害であると判断されればよいのですが、権利が無効にされたり、対象品が権利範囲に属さないと判断されたりしますと、実際は権利侵害ではないのに権利侵害であると書いて取引先に送付したわけですから、「虚偽の事実を告知し、又は流布する」前記不正競争行為と認定されるのです。

なお、競業者に直接送付した警告は、たとえ権利が無効にされたり、対象品が権利範囲に属さないと判断されたりしても不正競争行為には該当しません。

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