通常実施権の効力とライセンス契約の保護

特許権者以外の者が正当に特許発明を実施するためには、実施権を有することが必要です。この実施権として専用実施権と通常実施権の2種類があります。

専用実施権は、特許権と同様に物権的権利であって、他人の無断実施を排除するための差止請求権をも有します。
通常実施権は自己が実施するのを特許権者に許諾してもらう債権的権利です。
専用実施権は、その性質上、特許庁に登録することが効力の発生要件です。

一方、通常実施権は、登録するしないは自由でして、登録しなくても特許権者との契約締結とともに効力が発生します。実施権契約には、実施料(ロイヤリティ)率や実施のノウハウなど、他人に見せたくない内容が含まれていることが多いので、通常実施権の登録は現実には滅多に行われません。

しかし、従来の特許法では
「通常実施権は、その登録をしたときは、その特許権・・・をその後に取得した者に対しても効力を生ずる。」(第99条第1項)と規定されていました。
つまり、登録しておかなければ、特許権が図らずも第三者に渡った場合、新たな特許権者が実施許諾してくれず、事業継続が不可能になるおそれがありました。

そこで、2011年6月8日に公布された改正特許法では、
「通常実施権は、その発生後にその特許権・・・を取得した者に対しても、その効力を有する。」と改定されました。
これにより、通常実施権者の事業継続が安定化し、特許発明の利用促進が期待されるようになりました。

Comments are closed