「新型ビタミンC」平成26(行ケ)10134

1.事件の概要

原告は、指定商品を「サプリメント」とする商標「新型ビタミンC」(標準文字)につき、商標登録出願(商願2012-86403号)をしたところ、商標法3条1項6号に該当するとして拒絶査定を受けたので、これに不服の審判請求をしたところ、特許庁は、同法3条1項3号に該当するとして「審判請求は成り立たない。」との審決をしました。
本件は、この審決の取り消しを求めて原告が請求した裁判で、知財高裁は原告の請求を棄却しました。

2.裁判所の判断

(1)商標不登録事由の有無について
「本願商標を、その指定商品である『サプリメント』に使用する場合には、これに接する取引者、需要者は、『従来のものとは違う新しく考案されたビタミンCを主成分としたサプリメント』であると理解し、当該商品の品質を表したものとして認識するといえる。
したがって、本願商標は、その指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法3条1項3号に該当する。」
「原告は、ビタミンC(L-アスコルビン酸)を改良したものは、化学構造が異なる以上、ビタミンCではないから、『新型ビタミンC』なるものは存在し得ないし、『新型ビタミンC』からは特定の意味を認識し得ない旨を主張する。」
「しかしながら、・・・。・・3条1項3号は、指定商品の一般の取引者又は需要者の理解を前提として、商標がその指定商品の品質等を表示するものとして認識され得る態様であるか否かを問題とするものであるところ、一般の需要者が『新型ビタミンC』との文字から受け止める認識は、・・・日常的理解の下に、ビタミンCに何らかの改善を加えたものという程度であると解される。」
(2)手続違反の有無について
「原告の主張は、本件査定において拒絶理由として挙げた商標法3条1項6号とは異なって、審決において同項3号に該当すると判断するのであれば、同号に基づく拒絶理由通知をする必要があるので、それをしなかった審決には、・・・違反する瑕疵があるとの趣旨と解される(なお、商標法3条1項6号に該当する場合と同項1~5号に該当する場合とで、その適用に択一的な排斥関係はないから、同項6号に該当すると判断することが、同項3号には該当しないとの判断を前提とするものではなく、この点に係る原告の主張は、失当である。)。
そこで、検討するに、・・・同項1号から5号までの規定は、・・・例示的に列挙するものであり、同項6号の規定は、・・・総括的、概括的に規定しているものと認められる。
・・・・
・・・・本件査定と審決は、いずれも、本願商標から・・・・出所表示機能を有するものではなく、商標法3条1項所定の商標登録の要件を欠く商標に該当するという共通の結論を示したものといえる。両者は、その判断の内容において実質的に相違するものではなく、その審理対象も、『新タイプのビタミンC』の意義という同一のものであって・・・、審決が、実質的に新たな拒絶理由を示したものということはできない。」

3.小職のコメント

商標法3条1項各号は、自他商品・自他役務の識別力の無い商標を規定しており、このうち3号は記述的商標を規定しています。
原告の主張は、商標不登録事由の有無について化学者や薬学者の観点からすると一応論理性を有しています。
しかし、商標法は、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達及び需要者の利益保護を目的としています(商標法1条)。従って、識別力の有無についても化学・薬学の専門家や技術者ではなく、需要者の立場で判断する必要があります
また、3条1項1号~5号が例示的列挙であり、6号が総括条項であることは、立法趣旨でもあります。
よって、判決内容は結論、理由ともに妥当と考えられます。
今後、商標登録出願するときは、その商標が需要者の観点で識別力を有すること先ず確認することをお勧めします。

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